学名:Citrus aurantium var, amara flos.
産地:フランス、イタリア、スペイン、モロッコ、エジプト、チュニジア
部位:花
ネロリはオレンジの花から抽出される精油で、オレンジの中にも、穏やかでいて、シャープな香り。私の香りのイメージは、アイロンがかかった清楚な白いコットンシャツ。
この精油は皮膚細胞の更新を助ける働きがあるのでスキンケアにはローズと同じく使用します。
そしてネロリの香りは大きな悲しみ、ショックをうけたとき気分を鎮めると言われています。それはネロリの催眠性が、幸福感を呼び起こし、慢性的な不安症、抑うつ症、ストレスを減少させるからです。
このネロリの癒しの力を知ったのは今から4年前です。
最愛の母との別れは、私の今まで生きてきた人生の中で一番大きな出来事でした。
その日から私のグリーフは痛み、後悔、悲しみ、怒りと形を変えていきました。
人からのお悔やみを聞くことで現実を見ることの痛みとなり、人に会いたくなくなり、母と同じような人を見ると気分が悪くなり、仕事も出来なくなり、、
大きな根っこを失くしたような何とも言えない不安感。
やがてリレーションシップにもトラブルが起きるようになりました。
このままの元に戻れないかもしれない、人に触れる、関わる仕事はもう出来ない、そう思いました。
ある日、暫く触れていなかった 精油の並ぶ棚が急に気になり、精油を嗅ぎたくなりました。ふと目に飛び込んできたボトルの蓋を開けた瞬間、強く精油が香り
立ちました。目には見えない香りの粒子がプチプチと私の周りで植物の精霊が漂うのを感じました。
私は深く息を吸い込み、私の周りにただただ寄り添い漂う精油の精霊を感じました。
その時、母の声が聞こえました。
「愛ちゃん、愛ちゃんの仕事は素晴らしい仕事よ~こんなに気持ち良いものを
皆にしてあげてね。こんな素晴らしい仕事、続けるのよ~」
いろんな記憶が蘇りました。母に痛みのあった時、身体をさすって欲しいとリクエストがあり、少しでも痛みが楽になるようにと願い母の体をさすったこと。
母が好きな精油をブレンドし部屋に焚いたこと。息をひきとる寸前も手をさすり続けたこと。それをとっても喜んでくれたこと。いつも言っていた言葉。
もう人に触る仕事は出来ないと、セラピストの仕事はもう出来ないと、そう思っていた自分に、ネロリの精油は母の言葉を思い出させ、そして届け、深く心を鎮めてくれました。この仕事を続けていかなければと。グリーフの中で思いました。
ネロリは死別や深い悲しみに、癒してくれるオイルだとも言われています。
私はネロリの香りに大切な記憶をよび起こしてもらい、癒され、自分とつながることが出来ました。これが私がネロリからもらった植物の叡智、恩恵です。
この体験からアロマセラピーの薬理効果だけでなく、心や魂への恩恵を深く知りたいと思いました。
精油は大変パワフルです。それは植物の命、エッセンスだからです。
人間が作る薬と呼ばれるものも、やはり植物の叡智には叶いません。
ネロリを嗅ぐたびに、当時の自分を思い出し、植物からもらった叡智を多くの方へ伝えていくそれが私の仕事だと思わされます。香りには記憶と深い関係があるとも言われますが、ネロリは私にとって大好きな母を思い起こさせる懐かしく特別な香りです。